アフターGIGA 教育データ利活用の現在地

アフターギガというワードが教育市場で話題になっています。

アフターギガとは何か。

その名前の通り、ギガの後。

つまり、GIGAスクール構想の後の社会や教育現場を指します

企業で言えば、GIGAスクール特需の後どういった戦略を立てていくか

教育現場でいえば、一人一台 端末をどう使っていくのか

それを、今のうちに考えておかなければ宝の持ち腐れではすまない。

ということなのです。

現在急ピッチで進む、ICT環境の導入ですが、それがゴールではありません。


こういった大規模な事業は、手段の目的化が発生しやすい気がします。

皆さんも、経験がありませんか?


本来の目的を失っては、いかに手段として行ったものがうまく行ってもゴールテープを切ることはできません。


では、教育現場にICT環境を導入する目的はなんでしょうか。


そうです。

  1. 多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる
  2. 教師・児童生 徒の力を最大限に引き出す


少なくとも、GIGAスクール構想の目的はこれでした。


しかし、ただ端末を入れるだけではこれらの目的は達成できませんよね。


では何が必要でしょうか。


教員の努力?授業支援システム?国からの補助?


どれも必要そうです。


私の答えも聞いてやってください。

私は今後、データの活用これがキーワードになってくると思います。


データと言いましたが、ここで言うデータとは、学習データ保険データなどです。

これらがしっかり活用できれば、一人一人に適した学習や指導ができると思いませんか?


しかも、ICT環境が整えば転校先や進学先などにそれらのデータが引き継がれます。


一人一人の苦手科目、得意科目に合わせた学習提案などへの活用はもちろんですが、もう少し違った角度からも活用ができると思います。


それは、いじめや虐待、その他の理由で転校する子や悩みを抱える子への心のケアです。


私は学生時代に通信制高校の学長と仲良くしていただき、さまざまなお話をしていただく中で忘れられない一言があります。


「もっと早くこの子と出会えていたら、もっと早くこの子がどんな子か知ることができたら、卒業するまでに救えたのに…」


早く出会えなくても、出会えた時にできるだけその子の事を教えてあげられる。


それを必要とする子も多いのではないでしょうか。


その先生は、転校先、転校元の連携のなさを重要課題として捉えていました。

学校の先生が協力的でない場合も多く、引継ぎは困難なことが多いと聞きます。


今後通信制の学校は増えていくでしょう。(いい意味で)

その課題を解決するためにもデータ活用は必須だと考えます。


ということで今回は、国の今後の流れである教育データの利活用についてお話します。


読み終わった時、きっと国の方向性と現在地が理解できるでしょう。



データの利活用の概要と現在地


今後、公教育で最大のテーマ、キーワードとして耳にするようになるのは、


多様な子供たちを誰一人取り残すことのない「公正に個別最適化された学び」の実現です

余談ですが、文科省は「公正」という言葉にこだわりを持っているらしいですね。


憲法や教育基本法を基に、日本の教育は平等に最も力を入れてきたと言えるかも知れません。


当たり前のように受けている義務教育、世界的にみて圧倒的な識字率はこうした方向性の努力の賜物ですね。


そんな平等を重じてきた日本教育が次に掲げるのが公正。


今後、注目するべきでしょう。


さて、本題に戻りましょう。

令和2年7月7日の七夕に教育データの利活用に関する有識者会議の第一回が開かれました。


主な検討事項は、

  1. データの標準化
  2. 学習履歴利活用環境の整備
  3. データによる学習分析です。


この3つを教育ビックデータのあり方として、検討すべきものと政府は考えたわけですね。


それぞれ重要なことに聞こえます。

全てを解説し、皆さんには様々な観点から批評をいただき、私の知恵に吸収したいところではありますが、

現在地としては、まだ①が検討されている最中です。


なのでこの後、①にだけ軽く触れますが、まずは利活用のイメージを掴みましょう。
まだまだ、これらは始まったばかりなんです…!


利活用のイメージを捉える


データの利活用ができるようになれば、どんな教育現場が訪れるようになると思いますか?


AIが個人に最適な問題を出してくれる?宿題を勝手にやってくれるロボットを作れる?
どれも素敵な未来ですね。


政府は、3つの目的に沿って利活用することを主に考えています。


①個人の活用による学習等のサポート

これはつまり、自治体、学校、小中高の段階問わず記録をデジタルで記録することで、自らの振り返りに活用できるといったものです。
自分の苦手科目の把握や、成長が数値化され可視化されることでモチベーションにつながったり、進路選択や自己分析等にも活用できたりしますね。


②学校教員等の指導改善

個別最適な学習指導、生徒指導を実現できます。
例えば、苦手な科目の中でもどの単元が苦手なのか、どういった傾向があるのかという細かなデータを見ることで、苦手克服を促したり、最初に書かせていただいた転校時に効果的な引き継ぎが行えます。
教員も、PDCA(今はAARが注目されていますが)を活用した、実践的な授業づくりが今より効率的に行えるようになります。


③新たな治験の創出、政策への反映

蓄積されたビックデータを分析することで、制作への反映やEPBMの推進を行えます。
これまでエビデンスを基にした政策が少なかった日本教育に終止符を打てるかも知れませんね。

これらが、政府の考えるデータ活用です。


一見、とてもいいことにも見えますが、もちろん問題点もたくさんあるでしょう。

個人情報保護の問題やICTリテラシー、データ活用の知見が不可欠な点


そもそも子供たちの努力を数値化して良いのかという意見もあるでしょうし

工作や音楽などの実技科目のデータのあり方も問題になるでしょう。


これから、しっかりと検討会を追っていきNOにはNOをすぐに言えるように、


YESにはYESとはっきり言えるようにしていくことが重要です。

それでは①データの標準化について少し触れましょう。


現在地、教育データの標準化について

皆さんが、教育学者だとして、様々なデータを活用し、今後の教育をよくしていくための研究をしようと思ったとしましょう。

思ったとしてください。

少し先の未来ですから、色んな教育機関に様々な学生のデータが蓄積されています。

皆さんは、データベースにアクセスしてそのデータを集めるわけですが、

そこで気がつくわけです。

これ、単位や種類がバラバラでデータを整理するだけで何年かかるんだ!
と。

学者はそれが仕事だ!とおっしゃる方がいるかもしれませんが、

絶対、揃っていた方がいいですよね?

教員の方ならどうでしょう。

前述したように、学生のデータをそれぞれの子供達の成長に活かしたいと誰もが思うはずです。

でも、家庭の事情で転校した場合、前の学校のデータ規格と、次の学校のデータ規格が違ったら…

データを効果的に活かせないばかりか、その子だけ蓄積されてない情報があったり、必要のない情報が蓄積されていたり、本当に必要な情報の蓄積が地域によって差があるなんてことが起こりかねませんよね。

だから、そういった教育データを標準化して単位や種類を合わせましょうよってことです。


(10月19日現在、第2回の会議資料が公開されています。)

そこで今、検討が進められているのが

指導要領のコード化です。

幼・小・中・高・特別支援の全教科を対象に全項目(総則、各教科、特別の教科 道徳、総合的な学習の時間 等)にコードを付与するものです。

どうしてコード化をするのか。

それはまさに標準化するためです。

学習指導要領にコードが付与されれば、違う会社の教科書や、参考書、教材、博物館や図書館などで連携を図ることができるようになります。

例えば、戦国時代に出されたある法令のコードを、データベース等で入力すると、連携された媒体を介して博物館の資料や、民間の教材、動画や音声、映画なんかも引き出せるかも知れませんね。

まさに深い学びです。

それを実現するために、現在ルールを検討しているということですね。

これが、今の現在地です。


まとめ

ね。始まったばっかりでまだまだついていく気になるでしょ?

ドラマと一緒ですね。

どうでしたか。今後の教育政策の流れはつかめたでしょうか。

これは5年、10年後の話ではありません。

おそらく来年度中には方向性が決まり、進んでいきます。

私がこの記事を通して言いたいことは一つです。

これから先の国の動きの先頭をしっかりと捉えておくことの重要性です。

日本は民主主義国家ですから、NOはNOと突きつけることができます。

その判断が遅くなれば遅くなるほど、振り回されるのは子供たちです。

高大入試改革、NOという意思が勝ったと思われたあの日

SNSでは様々な方々が喜ばれていましたが、

その裏でしっかりと時間をかけて準備していた子供たちはどんな風に思ったでしょうか。

国が突っ走ることもあるでしょう。

私たちも周りが見えなくなることもあるでしょう。

私たち大人が、しっかり早い段階で国と一緒に考えていく。

その姿勢がなければいけません。

まだ、幸か不幸かICT教育は始まったばかりです。

私たちがしっかりと子供たちのための教育現場を作っていきましょう。

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